アガサ・クリスティに続き、エラリー・クイーンです。
展示作品に付けたキャプションから、本の背表紙などに書かれている文から引用した”あらすじ”と、僕自身の感想である”作品について”も紹介しています。
『九尾の猫(探偵:エラリー・クイーン)/エラリー・クイーン』
あらすじ
手当り次第に殺人を犯し、ニューヨーク全市を震撼させた連続絞殺魔〈猫〉の正体は? 〈猫〉が通りすぎた後に残るものはただ二つ——死体とその首に巻きついた絹紐だけだった。おそるべき連続殺人をつなぐ鎖の輪を求めて、エラリイと〈猫〉の息づまる頭脳戦が展開される!
作品について
始めて読んだエラリー・クイーンでこれをきっかけにクイーンにはまってしまいました。前作でエラリーは手痛い失敗をして、自信を失い田舎へ引き蘢ってしまいます。警視である父、リチャード・クイーンはトラウマを克服させようと捜査へひき戻らせ、息子の再起を促します。この悩めるクイーンが自分と向き合い何度も挫かれ、それでも真実へと向かっていく姿は、他の探偵には無い人間らしい不完全さの魅力が詰まっています。
『ギリシア棺の謎(探偵:エラリー・クイーン)/エラリー・クイーン』
あらすじ
盲目の老富豪ハルキスの死がすべての発端だった。葬儀は厳粛に執り行なわれ、遺体は無事、教会墓地に埋葬された。だが、その直後奇妙なことが起こった。保管済みの遺言状が見事に消失し、捜査も空しく何の手がかりも得られなかったのだ。大学を出たばかりのエラリイは棺の発掘を主張したが、そこから出たのは第二の死体だった! 緻密な推理が二転三転し、謎の犯人との息づまる頭脳戦が展開する、巨匠の最大長篇。
作品について
大学卒業後のエラリーが犯罪捜査顧問として始めて担当した事件です。“簡単な事件”と、たかをくくって事件に臨んだ若いエラリーは、その高慢な頭脳を犯人に利用されてしまいます。エラリーはこの経験で自分の未熟を悟り、屈辱と正義感に燃えて犯人へと迫っていきます。探偵としては珍しく、作品ごとに失敗や苦悩を重ねて成長していく決して有能ではないが、人間臭くて、私の一番のお気に入りの探偵でもあります。
キャプションでも書いていますが、クイーンは僕の大好きな推理作家で探偵です。
つまり作家=探偵となっているわけで、架空の探偵の事件録として本が出版された、というスタイルをとっています。
実際に書いているのはフレデリック・ダネイとマンフレッド・リーのコンビです。
このクイーンはホームズやポアロのような完成された探偵と違って、挫折や失敗の多い探偵です。
人間的な葛藤の多いクイーンはとても親近感があり、作品のプロットもとても手が込んでいます。
『九尾の猫』は今回の展示で一番よく出来た作品になった、と自賛しています。
次回はジョン・ディクスン・カーとエドガー・アラン・ポーです。