お世話になっている取引先の編集さんが、独立して旅をテーマにした事業を立ち上げました。
彼は今ご夫婦で世界一周の旅に出たのですが、その前にかつてのご縁でお仕事のご依頼をいただきました。

この本の著者である横山大樹さんが、大学時代に研究していたカンボジアのとある村の生活様式についての本を出したいとのお話でした。
この集落“カンポンブロック村”はトンレサップ湖という干満差の大きい湖の近くに位置しており、雨期の満水時には家の二階くらいまで水がたまって、村ごと水没してしまうのです。
しかしこの村の人々は移住せずに、家の高さをあらかじめ高くして満水時には二階部分で水上生活をする、という不思議な生活を古代から変わらず続けているそうです。
この村の「自然との共存の仕方」と「生活のための建築」に魅かれた著者・横山さんの思いを受けて、この村の仕組みをイラストで伝えるお手伝いをさせていただきました。
またこの本には写真家(現・カワラマン)・山田脩二さんが個人的に訪れたカンポンブロック村の写真作品も掲載されています。




この本の編集を請け負った『旅とロック』の鈴木英嗣さんから助力の依頼を受けました。
この村の実態が全景写真ではわかりにくいのでイラストにしてほしいとのことでした。
「こんな様子を伝えたい」「だったらこうした方がわかりやすいんじゃないか」とアイデアをお互いに出しながら作るのはとてもやりがいを感じました。

出版社に勤務されていた時から、ぼくのイラストを特に気に入って下さっていて、退職される際に「また一緒に仕事しましょう」と仰ってくれたことを本当に叶えてくれたことがとても嬉しかったです。今回は昔描いていた版画調イラストのオーダーで、やり方を思い出しながらその頃のことを思い出し、ちょっと気恥ずかしい感じでした。
でもあの頃よりキレイに描けたかな。

近年続く災害の多くは人工的な自然開発の想定を上回る形で被害が拡大するケースが多いことはニュースでも取り上げられていました。
鈴木さんのご実家もそういった災害の影響を受け、地元の支援を続ける中で自然との共存を考える中、著者の横山さんからこの村の話を聞き出版にあたったそうです。
横山さんの語るカンポンブロックの人々や暮らしの魅力、鈴木さんが旅にかけた人生など、二人の熱い男の思いに首をもたげていた闘志が起き上がってきたようでした。

Amazonほか、旅行系書店に手取り扱っているそうです。