普段舞台なんて滅多に観ないのだけど、青春事情という劇団の最新作『カラフルモノクローム』を観てきたというお話です。

かつてバイト仲間だった加賀美秀明さんの劇団

ぼくが以前バイトしていた飲食店で先輩だった人が青春事情の加賀美秀明さん。一緒に厨房を回して幾度も多忙を乗り切った戦友とでも言いますか笑
まあバイトの話は置いといて、その縁で彼の芝居を観に行くようになりました。あの頃のお誘いではじめての小劇場。舞台ってなかなかきっかけがなくて、各劇団も集客で苦心してるんじゃないだろうか。なんて。

平成最後の年に観る昭和の話



舞台は昭和25年ごろ、人の少さな町で始めた一軒の写真館の主と幼馴染の良家のお嬢様との恋と、その周りの人たちの話。その頃の日誌を現代の子孫夫婦が読みながら回想劇として展開される二重構造です。
映像だといろいろな技術でどうにかしてしまいそうな時間の表現も、生の舞台だと「なるほど、そう来るか!」と膝を叩きたくなる感じ(※芝居を見慣れていない人の発言です)。とにかく舞台美術が凝りまくってて凄い!古い写真機やガラス戸の書棚、脚のついた引き出しとか年季の入った当時モノだけどどっから持ってきたの!?
はじめ子孫夫婦が祖父のやっていた元写真館に訪れるところから始まるのだけど、その白い壁の昔写真が飾ってあったらしい場所にほんのり日焼けあとがついていたりとか、写真館の撮影スタジオ(演劇上の)にかけてあるバックカーテンのシミ具合とか、昔の木造建築の柱っぽい色味とか、段々とこの作品は現実なのかもしれないと思えてくるほどの作り込み。あと髪型や服装もその時代(にしてはハイカラだったけど)らしく、レトロな可愛さもあって観ていてとても明るい気持ちになってきます。
演技もシナリオもコメディタッチで変なクセが無くて後味が良いし、初めての人でも安心して楽しめます。さすがグランプリ受賞者!

勝手にテーマを読み解く(ネタバレなし!)



ストーリーは上で書いた通りなんだけど真のテーマは「本音」なんだと勝手に思っています。
言いたいけど言ったところでどうしようもない、でも言わなくても消えることもない。きっとこの劇団の人たちは芝居を続けながら、どう生きていくのかずっと葛藤し続けてきたことのお話なんじゃないかなと思いました。願いは全て叶えられるわけじゃないし、道半ばで折れてしまう人もたくさんいる。ぼくの周りでもイラストを辞めてしまった人もいるし、彼らの周りにもそんな仲間がたくさんいたでしょうね。それでも青春事情が今回の公演を迎えたのは、やっぱり芝居を捨てて生きられない自分たちの本音なんだと(勝手に)感じてます。
なんとなく彼らの無意識がにじみ出ているような気がしてしまうから、こちらの気持ちも乗っかってしまう。

今が過去になる前に、するべきことをしているか

この舞台は終始本音が言えない人たちばかり出てきます。時代が変わっても本音を打ち明けるってなかなか難しい。
自分ではどうしようもないと諦めているけど本音は違う、ということは誰しも持っていると思います。でも本当にどうしようもないか現実に行動して確認したことはあるのか?諦めているのではなくそれを確認する勇気がないだけでは?できればそこのところを誰かに後押ししてほしいくらい重たいですよね。
でも何もしないまま巻き戻らない時間が積み重なっていくほうがもっと怖い。ぼくもイラストレーターとしてやってきた中でもうダメかもと思ったこともありました。でも辞めるには始めるのと同じくらい大きな決意が必要で自分にはそれが見つからなかった。それで結局展示会や営業してみたりしてきて今日も絵の仕事をしているのだけど、この人たちの芝居も続ける以外の選択がなかったのじゃないかな。動かなくちゃいけない時のあと一歩進む勇気を「誰か」に与えてもらうのではなく、自分たちで作る芝居に託すことが彼らの作品になったんじゃないかなって。

青春事情・第17回公演『カラフルモノクローム』


  • 公演期間:2018年12月13日(木)~18日(火)
  • 劇場:下北沢OFF・OFFシアター 東京都世田谷区北沢2-11-8TAROビル3F
  • ・チケット料金(前売・当日共通/自由席)
     一般:3,500円/ハッピーフライデー割:3,000円/学生:2,500円 (中学生以上は、要学生証提示)
     
     *未就学児の入場はお断りします。

詳しくは青春事情ホームページ
もう日が無いですけど、ラスト公演は18日(火)19:30からです。

写真がモチーフの作品なのに劇場で一枚も写真撮らなくてさっそく後悔…。なので加賀美さんのTwitterから投稿を拝借。失敬。。。